「小泉八雲 左目」で調べる人が知りたいのは、だいたい次のことだ。
いつ失明したのか、原因は事故なのか、なぜ写真が横顔(右向き)に多いのか、左目が白いと言われる理由は何か。さらに踏み込むと、視力の弱さが作品や文体にどう影響したのかにも関心が集まる。
ここでは、伝えられている事実関係を土台にしつつ、写真の角度を「右横顔/右斜め/俯き」に分けて理由を整理し、最後に作品への影響まで一つにつなげて考察する。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)とは
小泉八雲は、海外で生まれ、のちに日本に暮らし、日本の文化や民間伝承・怪談を英語で世界に紹介した作家だ。
日本での名が「小泉八雲」、海外では本名の「ラフカディオ・ハーン」として知られる。
代表作として『怪談(Kwaidan)』、『知られぬ日本の面影(Glimpses of Unfamiliar Japan)』、『心(Kokoro)』などが挙げられる。
結論:左目は16歳ごろ、学校での事故がきっかけで失明した
左目について最も基本となる筋は明確だ。
16歳ごろ、学校で友人と遊んでいる最中の事故で左目を負傷し、そのまま失明したと伝えられている。
「先天的に左目が見えなかった」というより、思春期の事故で視力を失ったという理解が中心になる。
事故の中身は何だったのか:2つの語られ方
事故の詳細は、要約の仕方によってニュアンスが変わる。大きく分けると次の2系統だ。
1)回転遊具「Giant’s Stride」+ロープの結び目が当たった説
古い伝記では、学校の遊びとして知られる回転遊具(Giant’s Stride)の最中に、ロープの結び目が外れて左眼を直撃し、失明したという説明がある。
このタイプの遊びは、中心の柱から伸びたロープを握って回転する。勢いがつくほど、ロープの先端(結び目)は硬い塊のまま高速で振り回される。顔の高さで当たれば、眼球への外傷が深刻になり得る。
2)同級生との揉み合い(scuffle)で負傷した説
別の解説では、学校での「揉み合い」の最中に左目を傷め、役に立たない状態になり、見た目の変化も残ったと語られる。
学校の遊びが荒れて揉み合いになることは珍しくないので、「遊具での遊びの最中の事故」と「揉み合い」は完全に排他的ではない。要点は、学校生活の中で左眼に強い外傷が起き、それが失明につながったという骨格だ。
左目が「白い」「左右で違う」と言われる理由
検索すると「小泉八雲 左目 白い」「左右で目の色が違う」といった話題に行き当たることが多い。
- 外傷や感染のあと、角膜や虹彩に濁りや変色が生じることはあり得る。
- 古い写真は露出や光の反射で、片目が白っぽく見えたり、左右差が強調されたりすることもある。
- 伝記・人物紹介では、左目に見た目の変化が残り、本人がそれを気にしていた、と説明されることがある。
ここで大事なのは、「失明」そのものと、「見た目の印象(白い・違う)」は別の層の話だという点だ。失明後に外見の差が目立った可能性は高いが、写真の写り方も絡むため、病名まで決めつけるのは難しい。
写真が「横顔(右向き)」に偏る理由:本人の意識と当時の撮影事情
小泉八雲の肖像写真は、真正面よりも横顔、とくに右向きに見える構図が多いと言われやすい。これには、本人側の理由と、写真そのものの性質の両方が関わる。
本人側の理由:外見への強い自意識
人物紹介では、事故後の外見を気にして、つばの広い帽子を使ったり、横顔で立ったりして特徴を隠したと説明されることがある。
この説明がある以上、「横顔が多い」という印象は偶然だけでは説明しにくい。とくに肖像写真は“残るもの”なので、本人が角度を意識した可能性は高い。
当時の撮影事情:正面より横顔のほうが成立しやすい面もある
19世紀の写真は、現代ほど気軽に撮り直せず、照明や姿勢の固定も求められる。正面で目元がはっきり写る構図より、横顔や斜めのほうが、陰影で細部を整えやすい場合もある。
つまり「横顔が多い」理由は一つではないが、本人が外見を隠そうとしたという説明と噛み合うところが大きい。
角度別:右向きに見える代表パターンと、なぜ選ばれやすいのか
ここからは、写真でよく見かける角度を3つに分けて、「なぜそうなりやすいのか」を具体的に整理する。
1)右横顔(ほぼ真横のプロファイル)
特徴
輪郭がくっきり出る。鼻梁、口元、顎のラインがはっきりし、目元の情報は最小限になる。
選ばれやすい理由
- 左目(失明した側)を「隠す」ではなく「写らない」に近い形で処理できる。
- 目の左右差があっても、横顔なら差が目立ちにくい。
- 写真としては「人物像」が立つ。作家や知識人の肖像として、横顔は格調が出やすい。
2)右斜め(右3/4:正面寄りだが右に振る)
特徴
右目の表情や顔つきは残しつつ、左目は輪郭の奥に入りやすい。横顔ほど極端ではないので自然に見える。
選ばれやすい理由
- 横顔ほど「隠している感じ」が出にくいのに、左目は目立ちにくい。
- 肖像として情報量が増える。人物紹介で使われやすい角度だ。
- 目元に強い差がある場合でも、斜めは光と影で調整しやすい。
3)俯き(伏せ目・下向き)
特徴
視線を落とし、まぶたや影で眼球の情報を減らす。目元の左右差を“角度”ではなく“露出量”で抑える構図になる。
選ばれやすい理由
- 目元の印象を最も薄められる。白さ・濁り・左右差など、話題になりやすい部分が写りにくい。
- カメラ目線の圧がなくなる。外見を気にする人ほど、伏せ目は取りやすい。
- 落ち着いた、内省的な印象が生まれ、作家像とも相性がよい。
「右向き」に見える写真の落とし穴:左右反転(鏡像)という問題
古い写真、とくにダゲレオタイプ(銀板写真)は、仕組み上左右が反転した鏡像として見えることがある。そのため、ある写真が「右向き」に見えても、次の可能性が混ざる。
- 本人が実際に右を向いて撮った
- もともとは左向きだが、写真が左右反転しているため右向きに見える
肖像は背景の文字などが写りにくいので、反転に気づきにくい。ここを押さえると、「右向きが多い」と感じる理由の一部が、画像の性質そのものに由来する場合があることも見えてくる。
左目だけではない:右目も強度近視で、生活と執筆の工夫が必要だった
小泉八雲の視力の話は「左目の失明」だけで終わらない。解説では、右目も強度近視だったことが語られる。その結果として、執筆には次のような「工夫」が必要になったと説明されることがある。
- 原稿に極端に近づいて書けるよう、机や椅子を工夫した
- 近距離の確認には拡大鏡を使った
- 遠くを見るために小型の望遠鏡(ポケット望遠鏡)を使った、とされることがある
- 眼鏡を常用しなかった、という説明も見られる
片目を失い、残る片目も近視が強い。これは「見えにくさ」が日常の前提になり、執筆行為そのものが身体条件と結びついていたことを示す。
視力の悪さが作品に与えた影響:何が変わり得たのか
ここから先は「こうに違いない」と断定する話ではない。ただ、視力の条件から、作品の表現に影響が出やすい方向性は具体的に考えられる。
1)描写が「遠景の一望」より「近距離の手触り」に寄りやすい
強度近視で、原稿に近づく形で書く生活になると、世界の捉え方が「遠くを広く」より「近くを濃く」に傾きやすい。
その結果、文章も、広い風景を均等に説明するより、細部の質感、陰影、湿り気、温度、肌の感覚のような“近い情報”に厚みが出やすい。
2)望遠鏡的な視線は「一点に焦点を合わせて場を立てる」書き方と相性がよい
望遠鏡は、世界を広げる道具でありながら、同時に視界を狭く切り取る道具でもある。遠景を一望できない代わりに、ある一点(人の動き、灯り、波、木の揺れ)を強く掴み、そこから周辺の気配を想像で立ち上げる。
こうした手つきは、怪談や随筆の「場の気配」を作る方法として非常に強い。
3)音や気配が、視覚の代わりに作品の骨格になりやすい
視覚が不安定になるほど、音・沈黙・間(ま)・足音・衣擦れ・風・水といった情報が、現実感を支える柱になる。『怪談』を読むと、恐怖の中心に「見えないもの」を置き、代わりに“気配”で迫ってくる話が多い。
これはジャンルの性質でもあるが、作者が「見えにくさ」を抱えていたことを踏まえると、音と気配で世界を組み上げる表現が自然に強くなる条件が揃っている。
4)「見えなくなる恐怖」が、記述の執念と結びつく可能性がある
片目に負荷が集中し、残る視力への不安が続くと、「今ある感覚を言葉で留めたい」という切実さが強まることがある。それは“怖さ”を煽るというより、感じたものを丁寧に残す方向へ働きやすい。
八雲の文章が、怪談であってもどこか冷静で、観察と記憶の積み重ねのように読める瞬間があるのは、この条件と相性がよい。
まとめ
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の左目は、16歳ごろに学校で起きた事故がきっかけで失明したと伝えられている。事故の細部は、回転遊具とロープの結び目という説明、あるいは揉み合いという説明などがあるが、共通しているのは「学校生活の中で左眼に強い外傷が起きた」点だ。
写真が横顔(右向き)に偏るのは、外見を気にして横顔で立つ・帽子を使うといった説明とよく噛み合う。さらに古い写真には左右反転の可能性もあり、見た目の「向き」の判断が揺れることもある。
そして重要なのは、左目の失明だけでなく、右目も強度近視だったと語られる点だ。拡大鏡や望遠鏡、執筆姿勢の工夫といった条件は、細部の描写、焦点の絞り込み、音や気配の表現と結びつきやすく、作品世界の手触りにも影響し得る。
FAQ
Q1. 小泉八雲の左目はいつ失明したのか?
一般には、16歳ごろに学校での事故をきっかけに失明したと伝えられている。
Q2. 左目の失明はどんな事故だったのか?
回転遊具(Giant’s Stride)の最中にロープの結び目が当たったという説明、同級生との揉み合いで負傷したという説明などがある。骨格としては、学校での遊びや衝突の中で左眼に強い外傷が起きた、という点で一致する。
Q3. 左目が白い、左右で違うと言われるのはなぜか?
外傷や感染のあとに濁りや変色が生じることがあり、古い写真の反射や露出で差が強調されることもあるためだ。見た目の印象だけで病名を断定するのは難しい。
Q4. 写真が横顔(右向き)に多いのはなぜか?
外見を気にして、横顔で立つ・帽子で隠すといった行動があったと説明されることがあるためだ。加えて、古写真は左右反転して見える場合もあり、「右向き」に見える理由が複数重なることがある。
Q5. 視力が悪かったことは作品に影響したのか?
断定はできないが、片目の失明と強度近視という条件は、近距離の細部描写、望遠鏡的な焦点の絞り込み、音や気配を軸にした表現と結びつきやすい。怪談というジャンル自体も「見えないもの」を扱うため、条件と表現が噛み合いやすい。






